大学案内

College Information

学長が語る 障がい児保育

学長が語る 障がい児保育

第2回

統合保育がめざすもの

障がいのある子どもたちの育ちの場として、統合保育というシステムが果たして適当なのかという議論が統合保育が始まった頃にはありました。専門的な機関で教育・指導を受けた方が良いのではないかという議論です。
統合保育の実践をとおして明らかになったことは、統合保育という場が障害のある子どもにとってすばらしい育ちの場であるということでした。
まわりに子どもがいることによって、障がいのある子どもも「巻き込まれ」「つられて」同じ行動を始めます。名前を呼ばれて返事をする、手洗い場に行く、言葉を発するなどなど、まわりの子どもたちに「巻き込まれて」「つられて」発現する行動はたくさんあります。さらに、まわりの子どもたちとの自覚的な関係ができあがると、まわりの子どもたちの行動を意図的に模倣しながら新たな行動を身につけていきます。
どんな子どもも、一人よりは、仲間の中で我慢強くなれます。配膳後すぐに手を出していた子どもも、「いただきます」まで待っている仲間たちの中で、次第に我慢する力を発揮するようになります。

運動会前日の、ある保育園での出来事です。
お迎えの時間に、年長組の一人の男の子が保育者に頼んでマットと跳び箱を出してもらい、明日のために跳び箱の練習を始めました。発育に遅れのある低身長の子で、仲間と同じ段を跳び切るのは、明らかに不可能でした。まわりでは、仲間たちが、お迎えが来ても帰らずに、応援を続けます。すると、その子の体がふわりと浮いて、跳び箱の向こうに降り立ったのでした。大歓声が上がりました。まわりに仲間がいるからあきらめずに挑戦し、まわりに仲間がいるから思わぬ力を発揮したのでしょう。
大人が1対1で子どもに身につけさせられることは、どれほどあるでしょうか。子どもたちは、多くのことを自分の力で自ら学びとっていきます。障がいのある子どもが、その子なりに集団参加ができるようになったとき、その保育は成功したといえるのではないでしょうか。