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学長が語る 障がい児保育

学長が語る 障がい児保育

第3回

子どもは、「障がい」をどうみているのか

ある保育園に、体に少しマヒのあるA男くんがいました。ある日、その保育園にC子ちゃんが転園してきました。初めてA男くんの歩き方を見たC子ちゃんは、A男くんを指差して、同意を求めるように保育者に問いかけました。
「ねえ、先生、あの子の歩き方、変だよね」
さて、C子ちゃんにどう返事をしたらよいでしょうか。
C子ちゃんは、単純に、みんなと違うAくんの歩き方への驚きを表明しているだけだと思います。だとすれば、「そうね。C子ちゃんの歩き方と少しちがうかな。でもね、あの歩き方がAくんの普通の歩き方なんだよ」と、“違ってもノー・プロブレム”みたいな感じで答えればよいでしょう。もし仮に、C子ちゃんの「変だよね」という言葉の中に、否定的なニュアンスがあったとすれば(子どもの場合は、ないと思いますけれど)、「変じゃないんだよ。みんなとちょっと違うだけだよね」と、同じく“違っていてもノー・プロブレム”みたいな感じで答えればよいでしょう。

一方、避けたい答えは、「しーっ、そんなことを言ってはいけません」ではないかと思います。なぜなら、そう言われたC子ちゃんは、その言葉から、Aくんの歩き方について、何かネガティブなニュアンスを感じ取ってしまうと思うからです。その感覚は、「障がい」に対する、ある種の差別感につながるもののような気がします。それに、万が一、C子ちゃんから「なんで言っちゃいけないの?」と反論されたら何と答えたらいいのでしょうか。
子どもには、言うまでもなく、「障がい」という概念はありません。Aくんにマヒがあって歩き方がみんなと違っても、子どもにとっては、単に「そういうAくん」なだけです。BくんともCくんとも違う「そういうAくん」としてAくんを捉えているだけです。そこには、「違い」を大人のように価値づける意識はありません。
「みんなちがって、みんないい」(金子みすゞ詩)
このことを統合保育の中で子どもたちは、自然に学んでいきます。
そして、保育者自身も「みんなちがって、みんないい」という意識をきちんと持って、“「違い」に対する大人の価値づけ”から子どもたちを守りたいものです。