在学生・卒業生からのメッセージ

Message

星美について語り合おう 特別支援教育 座談会

星美について語り合おう  特別支援教育 座談会

保育現場の約7割以上で行われている「インクルーシブ保育」。その現場で、本当に必要とされている知識や技術はどんなものなのでしょうか。星美の卒業生で8年間の勤務経験のお二人が「科目履修生」として、母校に戻ってきた理由とは? 学科長の町田先生を交えて、星美の特別支援教育について、語っていただきました。
*内容は、取材当時のものです。

科目履修生としての学び

町田先生:お二人は在学中に幼稚園教諭免許状と保育士資格を取っていますが、当時はまだ特別支援学校教諭の免許状が取れる授業がありませんでした。この免許状を取るために、星美で学び直したいと思ったきっかけはなんでしょう。

T.S.さん:星美を卒業して働きはじめた幼稚園で、1年目に担当したクラスに障がいのある子どもがいました。自閉スペクトラム症で、パニックを起こすと自傷行為をしてしまうこともありましたが、一クラスの人数も多く副担任もいない状況だったため、その子のケアをしながらほかの園児もみなければいけません。その子が授業中に駈け出していってしまうと追いかけていき、その間は他の子どもたちをほったらかしにしてしまう。逆もあり、みんなで遊戯の練習をしている最中、その子が集中できなくなってしまっても対応できない現状があったり。私に知識があれば、もっと違う接し方ができるのではとモヤモヤした気持ちがありました。

T.K.さん:私は通っていた小学校・中学校には特別支援学級が設置されていて、在学中の9年間は、ダウン症の子とずっと同じクラスで、音楽や道徳などで同じ授業を受けたり、一緒にご飯を食べたりしていました。難しい言葉が通じないとか会話が成り立たないことはありましたが、幼い頃から障がいのある子どもと関わる機会があったので、そんなに変わらないことも多いという理解がありました。でも実際の幼稚園や保育所では、障がいのある子との関わりに戸惑う先生が多く、受け入れ体制も整っていない園も多くあります。それは先生方の障がいに関する専門的な知識や、そういった子どもと接した経験もなかったからでしょう。園内で保育者に対する研修体制も整っていなかったので、それなら自分で知識を深めようと思うようになりました。

町田先生:障がいのある子と出会うと、どうしたらいいか分からず戸惑う先生が多いですが、知識があればその子どもの特性や行動の意味を理解できます。星美で特別支援教育を学んだ学生は、知識と実習の両方から専門的に学ぶことで、障がいのある子どもに対して共感したり、その子どもの立場になって考えることができ、職場でも強みになります。

T.S.さん:勤務して6~8年のとき、年少から年長まで持ち上がりで担当したのですが、その頃になると仕事に慣れて余裕がもてるようになりました。1クラス24名に障がいのある子、児童発達支援センターに訓練に通う子、診断はないものの、気になる行動を示す子どもなどが数名いたのですが、障がいのある子どもがいると、ほかの子ども達がその子にどう関わろうか、みんなで考えてくれるようになりました。その思いやりが年下の子に優しくすることにもつながるのを見てきました。入園時、障がいのある子どもは他の園児に興味を示しませんでしたが、多くの子どもと過ごすうちに、他人と関わる心地よさがわかるようになり、ほかの子とも関わるようになりました。例えば、年少さんのブランコを揺すっていて、最初はブランコに乗りたいのかと思ったらニコニコした表情だったので、「揺らしてあげたいんだな」という場面があったり。ほかにも「あ、ほかの子と関わろうとしている」と感じることが多々ありました。そういう場面を目にすると、インクルーシブ保育の意味をとても有意義に捉えることができました。でも、私はそういう子どもたちの知識がないので、星美で学び直そうと考えました。

町田先生:最近卒業していった方のほとんどは、初めての職場で分からないことがあって戸惑ったり、先生同士のことで悩んでいたりします。しかしベテランのこのお二人は特別支援教育についてのモヤモヤを抱えていることがとても印象に残りました。この悩みの違いは、現場で障がいのある子どもへの保育に真摯に取り組んでいるかという差なのでしょう。そこでお二人が科目履修生のことを知って学び直しに来られたのはうれしいことです。

T.K.さん:私は幼稚園を退職したあと、海外に行って幼稚園のボランティアをしたことがあります。普通の園児と一緒に障がいのある子どもがおり、普通に遊び、みんなフレンドリーに接していたのが印象的でした。この体験で特別支援教育について学びたいという気持ちが強まりました。

町田先生:お二人が受けている特別支援教育の授業では、専門の専任教員から、様々な障がいのある子どもの色々なケースを具体的に学ぶことのできる授業があります。特に、今現場でのニーズも高い自閉スペクトラム症の理解と支援に関する専門の授業や、その他の発達障がいについて実践的な学びができる授業が設置されており、こういった講座がある学校は短大ではあまりないでしょう。でも、この知識は現場ではとても大切だと考えています。

星美のすばらしさを再発見

T.S.さん:私はちょうど年少、年中、年長までみた子どもを送り出したタイミングだったので、職場をやめて学び直すなら今しかないと思いました。職場でAD/HDや自閉スペクトラム症、ダウン症や診断はないものの、気になる行動を示す子どもなどいろんな子どもと出会ってきたので、授業で先生が話すことも「あったあった!」とイメージしやすく、「確かにあの子はこういう行動をしていたな」とパッと頭に浮かびます。現場を経験したからこそ、授業で話されたことが実感と結びつき、よく理解できます。授業でやってはいけないということを「私はやっていてしまったなぁ」と反省することもあります。

T.K.さん:学生のときは何のためにやっているかわからなかったことが、今なら大切なことだと実感できます。だから授業中も眠くならないし、一番前の方に座ってしっかり聞いています(笑) 学校がきれいになっているのもびっくりしました。廊下もトイレもきれいで感動しました。

T.S.さん:一緒に授業を受けていると、つい先生目線で在学生を見てしまうことがあります。責任実習の授業で絵本の読み聞かせやパネルシアターを学生同士で実演しあいますが、「園児が目の前にいるイメージができていないな」とか、「読み方にもっと抑揚をもたせたほうがいいのに」とか、実習生を見ているような気持ちになってしまいます。でも、製作やゲームで面白いアイデアに出会うと「こんなやり方もあるんだ!」と発見もあります。

町田先生:卒業生が学び直しに来てくれると、在学生にはいい刺激になります。「これは何のために大切なの?」と学生が疑問に思っても、先輩方が熱心に聞く姿を見ると、大事なことなのだと感じてもらえます。

T.S.さん:他の学校でも特別支援学校教諭の免許状は取れますが、時間がかかってもやっぱり星美がいいと思いました。知った先生と慣れた環境で学べた方がやっぱりいいです。

T.K.さん:先生が学生全員の名前を知ってるなんて他の学校じゃないですからね。先生との距離が近くて、授業が終わってからも質問がしやすいんです。カリキュラムが空いている時間も対応してくれたり、就職するときも親身に相談に乗ってくれました。卒業後も転職の相談ができたり、斡旋までしてくれるなんて他の学校では聞いたことないですよ。こういう星美のよいところは卒業生としても誇れるところです。

T.S.さん:大きな学校ではピアノを使うために朝6時に行って並ぶなど、施設を使うのも大変だと聞いています。その点、星美は好きなときに好きなだけ練習できる恵まれた環境だと思います。

学び直して感じたこと

T.K.さん:科目履修生として星美に通う際、職場をやめたのでアルバイトをはじめました。今までと違った仕事を体験してあらためて「保育の仕事が好きだ」と実感しました。だから、特別支援学校教諭の免許状を取ったらまた保育の現場に戻りたいと考えています。特別支援教育の体制がまだ十分に整えられない幼稚園に入ってサポートしていくのもいいけど、十分に体制を整えてインクルーシブ保育に力を入れている園にも興味があります。特別支援教育を学ぶうちに、何かしたいという気持ちが湧き上がってきました。

T.S.さん:私は障がいのある子について知るのが目的でしたから、特別支援学校教諭の免許状を取ったらまた幼稚園に再就職しようと考えていました。でも福祉の先生が担当する授業で、聴覚障がいとか視覚障がいとか肢体不自由などいろんな障がいを抱える人のことを知り、福祉的なかかわりやケアへの興味も湧いてきました。でもそれだと他の資格も必要になるし、福祉関連の研修を受けてみようかなど、新たな選択肢が増えてきました。

町田先生:星美では幼稚園、保育所、特別支援学校での実習があります。実習を体験すると自分が思い描いていたものと違うことを発見し、視野が広がり、選択肢が広がります。二人はこれから特別支援学校の実習を体験し、また見つけることがあるかも。学び直しにきた方は吸収の仕方が違いますから、どんどん知識を身につけていってください。

Profile

≪在学生≫

T.S.さん

平成19年3月
専攻科幼児保育専攻修了
平成27年4月より科目等履修生として特別支援教育を学んだ

≪在学生≫

T.K.さん

平成19年3月
専攻科幼児保育専攻修了
平成27年4月より科目等履修生として特別支援教育を学んだ

≪教員≫

町田治先生

副学長/教授
幼児保育学科長